飛呀飛　Flying flying

東京発、中国インディペンデント映画

 

解説

2000年を迎える前夜、北京で二つのお金の物語が始まる。一つは1000年前に、商売の途中で金を狙われ毒殺された、ある商人の話である。黒い鉢に閉じ込められていた彼の亡霊は、その後、鉢を貰いうけた乞食の老人を追いかけ、自分がバラバラにされ鉢となった経緯を訴えようとする。もう一つは現代、借金の取立人が、借金を返せない旧友である詩人に手錠を掛けたことから始まる。金を返すまで手錠をはずしてもらえない詩人は、取立人と手錠をはめた姿のまま、鉄道員である恋人を迎えにいき、家に帰る。詩人の恋人は、取立人の元から逃げだした妻だった。この皮肉な再会で、三人とも手錠の「深淵」へと追い込まれていく。

 

Director’s note

金銭というものは、人間の悲喜劇を凝縮している。1000年前でも1000年後でも、金銭夢物語には何も変わりがない。いわゆる人類文明の進歩というものは、金銭の影響力が大きくなって行く事にすぎないのかもしれない。中国は、今、金銭の世界秩序の中に、巨人のような勢いで進出している。私は、中国社会における金銭を巡る人間関係を表現するために、ドキュメンタリーとフィクションをミックスし、現実と舞台、現代と古代、それぞれの絡み合いの中に、単純な映画的言語を探し求めた。そして、私は探し当てたのだ、手錠と亡霊を。手錠の物語は、私の友人二人と無口な恋人を結びつけた。物語の始まりは虚構だが、その過程と結末はドキュメンタリー的である。亡霊の物語も京劇の舞台から現実の北京に広がっていき、超現実的ではあるが、非虚構的だ。二つの物語空間は呼応している。それは、まるで喜劇と悲劇が人生の中に重なりあうがごとき、夢想と絶望が新世紀の始まりを告げる鐘の音に重なりあうがごとくに。